時間〈とき〉ラボ運営事務局 さん
1949年、生産現場のコンサルティング活動を行っていた日本能率協会が、「時間もまた資源である」という考えのもと、戦後まもない日本で初めて“時間目盛り”を採用した手帳として「能率手帳」を発行しました。その後、人材育成支援事業、手帳事業、出版事業等の事業部門を集約し、1991年に日本能率協会から分離独立する形で㈱日本能率協会マネジメントセンター(略称:JMAM)が設立されました。
「#JMAM手帳を知る」では、手帳づくりの舞台裏を垣間見たり、歴史を振り返ったり……。社員すら知らない!?情報も盛り込みながらJMAMが手がけてきた手帳のあれこれを毎回いろんな角度からお伝えしていきます。
「#13 藤原しおりさんと巡る手帳製本工場 」 に引き続き、紙や手帳、文房具好きな藤原しおりさんの工場見学の様子をお届けします!
前回は製本工程へバトンタッチする大事な入り口となる工程の「断裁」を藤原さんの目線も交えてご紹介しました。紙の触り心地や手帳の使い心地の良さにこだわりがある藤原さん、今回はどんな発見があるでしょうか?
「断裁」できれいにカットされた大きな手帳用紙を、次は手帳のサイズに合わせてページの順番に折っていく「折り(おり)」の工程に進んでいきます。この折りの工程も新寿堂が誇る推し工程のひとつなんです。
▲今回は推し工程の折りを中心に、手帳としての中身が徐々にできあがっていく工程をお届けします。
断裁した一枚の大きな紙には16ページ分が印刷されています。これを手帳にしたときに、きちんとページ順になるようこの大きな紙を折って冊子を作っていきます。
“折る“と言っても、ただ折るだけでは、JMAMの手帳としてはNGなんです。
▲雲野さんから“折り“のこだわりについて説明を受ける藤原さん。
この大きな一枚の紙は、3回折ると冊子になります。いくら薄い紙でも何回も折っていくと、折り目部分がだんだん分厚くなって、紙の4角が合わなくなってきます。角と角が合わないままだと、手帳にしたときに左右や表裏で罫線が揃わなくなってしまうんです。JMAMの手帳は特にきれいに揃うようにこだわっています。
この繊細な“折り”という作業を機械で行い、16ページの束にしていきます。
▲日本でトップクラスといわれている折り工程です。
実は機械の性能としてはもっと早く動かすことができるのですが、スピードをわざと落として機械を動かしています。その理由を雲野さんが教えてくれました。
「機械だからといって正確に全てができあがるわけではありません。3分に1回はできあがった冊子を抜いて、必ず人の目で確認していきます。正しい箇所で折れているかだけではなく、左右のページで日記欄の罫線が揃っているかまで確認します。この確認作業があるので、機械のスピードを遅く設定しているんです。」
「紙を折るという一つの作業に対して、数ミリのズレも許さなかったり、わざわざ機械のスピードを落として人の目で確認したり、そこまで気をつけて作ってるんですね」と藤原さんは驚いていました。
その後、折ったときに入ってしまった空気をプレスして抜いていきます。
その後、折った冊子を手帳のページ順になるよう冊子を束ねていく「丁合い(ちょうあい)」という工程を経て、一冊にした冊子を糸で縫い合わせていく「糸綴じ」という工程へ。手帳を使用いただく間に何回開いてもしっかりと耐えるように適した製本方法と言われています。
縫い合わせるとは、一冊にした冊子の背中部分をザクザクと針と糸を通して、丁合いで重ねた冊子たちを1つに縫いまとめるイメージです。
▲機械の上にある糸が丁合いで重なった冊子を1つに束ねる命の糸。
手帳によってサイズやページ数などが異なるため、強度の調整も手帳によって異なります。糸の本数やかがり糸の長さ、糸を通すための穴の大きさ、針の刺さり方も注意して行なっています。
それでは・・・丁合いで束ねられた冊子を糸でかがっていく様子をみていきましょう。
丁合いで束ねられた冊子を固定し・・・
糸で一斉に背中の部分を縫い・・・・
出来上がり!写真で見ると工程が僅かに見えるのですが、実際は一瞬で終わってしまう工程なのです。
出来上がるまで1秒あるかないかぐらいのスピードなので、藤原さんも「え?見えない!」と何回もいろんな角度で見学していました。
真ん中で縫われ1冊に綴じられた冊子が完成!
丁合いで束ねた冊子を縫うだけですが、実はこの糸で綴じるところにも、新寿堂のこだわりポイントが。糸で綴じている背中部分に糊をつけ固めてさらに強度を高めていくのですが、“糊の入り方”に関して細心の注意を払っています。
糸で綴じられた力加減によって、16ページの冊子ごとの隙間が変わってきてしまうため、その隙間が均一になるように糸の加減などを調整しています。隙間を均一にして繊細に糊を付けていく理由を雲野さんが教えてくれました。
「糸が緩んだ状態で一冊に綴じてしまうと、束ねた隙間に糊が入りすぎてしまって、手帳がやや開きにくくなってしまうんですよ。糊の量に差があると乾くスピードなども異なってくるので、手帳の強度にも影響がでてきてしまうんです。この何回もの開きに耐える強度と、パタンと開く開きやすさの両立が、手帳にとって大事な要素になるんです。」
「細かい!手帳の開き具合って手帳を選ぶ上で気にするポイントですけど、たしかに強度も伴っていないと1年間使い続けられないですよね。そんなところまで気を配って作られていたんですね。今まで気にしたことなかったです!」と藤原さんは驚かれていらっしゃいました。
背中に糊を塗る前に、きちんと規定通りに手帳が糸でかがられているか、開くことができるか、糸のヨレはないか、などを機械ではなく、必ず人の目で確認しています。人が責任を持って見ることで、胸を張って、お客さまに使っていただくことができると考えています。
糸の状態などを確認したら、糸で綴じたときにできた空気を抜くために「ならし」というプレス工程をします。
▲「ならし」後、落丁がないか、糸がおかしな状態になっていないかを細かく確認。
▲「ならし」前の手帳の中身たち。紙好きな藤原さんも「ふわふわしてる~!生き物だ!」と紙に空気が含んでいるふわふわ感を触って確認されていました。
・・・今回はここまで。
次回は、いよいよ手帳が完成する工程をご紹介します!
―― 藤原しおりさんと巡る手帳製本工場シリーズ全3回掲載 ――
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