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消費する読書から対話する読書へ。読書ログで見つめる、新しい本との付き合い方

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みなさんは、読み終えた本の内容をどれくらい覚えていますか?


「たしかに感動したはずなのに、具体的に何に心を動かされたのか思い出せない」「読んだ冊数だけは増えていくけれど、自分の中に何が残っているのか分からない」という方も多いと思います。


今回お話を伺ったのは、そんなモヤモヤから「読書ログ」を始めたフリーライターの矢島美穂さん。読書ログを書き始めたきっかけや、考え方や行動の変化についてお聞きしました!


▲フリーライターの矢島美穂さん



マインドマップと読書の記録を組み合わせた「読書ログ」


――矢島さんのご経歴と、現在の活動内容を教えてください。


もともとは理系で、前職はリクルートグループの広告制作会社でディレクターや人事を務めていました。


家族との時間を取りたいということもあり、今はフリーランスのライターをしています。メインはWebメディアで、ここ4〜5年くらいは、インタビューや取材記事を中心に執筆するようになりました。もともと子どもの頃から、本を読むことや書くことが好きだったので、文章に携わる仕事は楽しいと感じています。


――読書ログを始めるに至ったきっかけを教えてください。


これだ、という明確なきっかけは、実はあまりありません。ただ、ある編集者さんに、「矢島さんは、自ら提案してくれた企画の仕上がりが素晴らしいので、そちらに力を入れてください」と言ってもらったことがありました。


『どんどん企画を出してください』と依頼されるのはうれしいものの、あるタイミングでインプットが枯渇して企画提案に行き詰ってしまい、インプットを補うために、本を読む時間を増やしました。ところが、読んだ冊数のわりに、自分の中で肥やしになっていない感覚があって。読むこと自体は楽しいけれど、読書が消費活動のようになってしまうのがすごく嫌でした。


だから、「もう少し丁寧に本と向き合いたいな」という気持ちがどこかにずっとあったのだと思います。本ともっとインタラクティブに、自分から働きかけるような読書ができたらいいな、と漠然と考えていました。


――そこで登場するのが手帳とマインドマップなんですね。出会いはいつ頃でしたか?


本格的に毎日の習慣として手帳を使えるようになったのは、2022年からです。とあるコンセプト手帳を使い始めたことがきっかけでした。ちょうどその頃に、インストラクターの方から教わる機会があって、今の読書ログでも活用しているマインドマップと出会いました。


それまでは、「答えのないことを考える」ということに苦手意識を抱いていました。特に、答えがない問いに対して、自らアイデアを出すのは本当に苦手だと思っていて。でも、マインドマップを書いていくうちに、「私って意外と色々なことを考えていたんだ」と感じることができたんです。


▲マインドマップの書き方を取り入れた初期の読書ログ


読書ログにも取り入れていますが、真ん中にテーマを書いて、そこから枝を伸ばして連想を広げていく。その構造が、自分の思考のクセにとてもマッチしていて、「思考するための型」を手に入れたと感じました。


読書ログを始めたのは、手帳やマインドマップとの出会いが重なったタイミングです。「あ、この読書のモヤモヤにマインドマップを組み合わせたらいいんじゃないか」と考えて、自分なりに試行錯誤を始めました。


 

 

「書きながら読む」読書で、考え方と行動が変わる


――実際に読書ログを始めてみて、一番大きな変化はどんなところですか?


一番は、シンプルに「内容が頭に残る」ようになったことです。


昔の私だったら付箋を貼って満足していたような部分を、その場でマインドマップやノートに書き出します。すると、読みながら理解が整理され、頭に刻み込みながら読んでいく感覚が強くなるんですよね。読み終えたときには、自然と記憶にも残りやすくなっている気がします。


▲書き始めたばかりの読書ログ。今とは違い、気になったことや考えたことを時系列順にメモしていくスタイルだったそう

 

――実際に、普段の行動の変化にもつながることはありましたか?


本で読んだことを、日常の中でふとした瞬間に思い出せるようになりました。「あ、これ、この前読んだあの本に役立つことが載っていたな」とか、「このモヤモヤ、あの本で書いてあったことと同じだ」など。そういう瞬間が増えました。そこから、実際に試してみよう、と行動に移すことも増えたように感じます。


最近だと子どもからのフィードバックが印象的でした。私はもともと短気でせっかちなんですが、子どもに「ママ、最近本当に怒らなくなったよね」と言われました。たとえばこれに効いたと感じる一冊が『子どもの傷つきやすいこころの守り方』という本ですね。読書ログを書き、できるところから行動に移していった結果なのかな、と感じています。


 ▲お子さんとの関わり方が変わるきっかけになった読書ログ。時系列は関係なく、気になることを吹き出しでどんどん書いていくスタイル


この本の中に、「子どもに余計な一言を言いそうになったら飲み込んで、その回数をポイントにして、自分にご褒美をあげましょう」というアイデアがあったんです。それを読んで、さっそく手帳に「ママのポイントカード」の欄を作りました。ついつい言いたくなるお小言を飲み込めたら1ポイント、10ポイント貯まったらご褒美というものです。面白いと感じたことはすぐに実践するようにしています。


――本の内容を読書ログに書き起こして、行動するまでの一連の流れがつながっているのがすごく面白いですね。


「読書ログ」というと、どうしても効率よく学ぶといったイメージがつきものですが、私にとってはそういった感覚ではありません。新しい価値観をそしゃくして、自分の中にインストールするための一つの助けであり、日常の行動と本との橋渡しをしてくれるような存在だと捉えています。



読書ログは要約ではなく、今の自分が気になる点に旗を立てる作業


――読書ログと聞くと、「本の内容をもれなく要約しなきゃ」と構えてしまう人も多いと思いますが、矢島さんの読書ログはそうではないとか。


私は、読書ログを本の要約とは捉えておらず、あくまで旗を立てる作業だと感じています。書いているのは、あくまで自分のフィルターを通して、今の自分にとって必要だと思ったところだけです。章ごとに全部まとめることもあれば、一冊のうち一章だけログにすることもあります。


▲一度ログを書いたら、最後に俯瞰で見てマーカーを引くようにしている


以前、どこかの記事で「一度書けば忘れない読書ログ」というようなものを見たこともありますが、私は少し考えが違います。忘れないために書いているというよりも、「この本にはこういう知恵がある」「この著者のこの章には、私が困ったときに頼れる何かがある」という目印、旗を立てているイメージなんです。


ログを書くようになってから本を再読することが増えました。同じ本でも、読むタイミングや自分の状態が変わると、気になるところも違ってくるんですよね。もう一度読んで、もう一度ログを書いてみると、「前回と重なっている部分もあれば、まったく別のところに線が引かれている」という発見があって面白いですよ。


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後編のコラムでは、「読書ログ」の具体的な書き方について聞きました。フォーマットや、道具選び、本の学びを手帳で行動に落とし込む方法など、さらに「読書ログ」について詳しく伺っていきたいと思います。


取材・執筆/柳川愛理

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