体験したことをありのままに書く。フリーライター・矢島美穂さんに聞く「読書ログ」実践法

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本を読んでも、内容があまり頭に入っていないような気がする。そんなもったいなさを、読書ログで楽しい記録に変えているのがフリーライターの矢島美穂さん。


小説、実用書をはじめとした読書の記録を手帳に残し、経験のコレクションとして味わい直す工夫とは? 本連載第二回では、実践編として、詳しい読書ログのフォーマットやこだわりの文房具、肩の力を抜いた読書ログの楽しみ方についてお話を聞きました。

 

▲フリーライターの矢島美穂さん



本の種類によって使い分ける「吹き出し型」「マインドマップ型」のフォーマット


――今実際に使っている読書ログのフォーマットから教えてください。


フォーマットは大きく分けると2種類使っています。1つが「吹き出し型」、もう1つが「マインドマップ型」です。


――それぞれ、どう使い分けているのでしょうか?


吹き出し型は、「浅く広く」情報が載っている本や、雑誌の特集、エッセイや小説などに使うことが多いですね。ワンチャプターで一つの話が完結するような構成の本は、吹き出し型が相性が良いのではないかと感じています。

 

▲「雑誌の特集一つ取っても、読書ログが書けるんです」と矢島さん


まず、ページのどこかに、その本の書影やタイトルを書き、そこから放射状に、「気になったフレーズ」「自分の心が動いた言葉」「真似したいアイデア」などを、吹き出しの中に書いていくイメージですね。読んだときの印象や、帯の雰囲気とリンクさせて、色味やレイアウトを本の世界観に近づけることもあります。

 

▲吹き出し型にしつつ、イラストも加えることでより見返した時に分かりやすいようになっている


――グラフィカルにまとめているのは、何か理由があるのでしょうか。


一番は「自分が見返したくなるから」です。昔は、箇条書き形式で読書ノートを書いていましたが、情報はたどれるものの、正直あまり見返したくならなくて。


視線が上から下に一方通行だと、俯瞰しづらいし、欲しい情報も探しにくい。吹き出し型だと、放射状に視線が広がっていくので、感覚的にいろいろな情報をたどれますし、「楽しく読み直せるノート」になると感じています。


――もう一つの「マインドマップ型」についても教えてください。


マインドマップ型は、一冊を通して一つのテーマを深く解説しているビジネス書や自己啓発書に使うことが多いです。真ん中にタイトルや書影を書いて、その周りに第1章、第2章と枝を伸ばしていくのが基本形ですね。

 

▲章の内容を書き写したり要約したりする必要はなく、気になるワンフレーズや考えたことを書いていくだけでもOK


マインドマップを解説する書籍などもあり、独学でも理解を深めることはできます。とはいえ、「読書ログ×マインドマップ」と、新しい試みを組み合わせて気張ってスタートするのは疲れて長続きしない展開にもつながりやすいので、気になるエッセンスを少しずつ取り入れつつ、ゆるく始めてみるのがいいかもしれません。

 

▲2つのフォーマットを組み合わせて書くこともあるという。ルールを厳密に決めず、その時に書きたい方でまとめる


特に、読書ログ初心者さんは厚い本全てをきっちりまとめようとすると挫折しがちなので、まずはこの章で自分が一番面白かったところや心が動かされたことを1〜3個だけ選んでみる。それを書き抜いて、そこから枝を伸ばすように、補足情報や自分の気づき、アイデアなどをくっつけていく、というように。


――吹き出し型とマインドマップ型、どちらのフォーマットにも共通しているのが、最後に俯瞰してマークアップするというステップなんですね。


たくさん書いてしまうと、情報量が多すぎて自分でも追いきれないことがしばしばあります。ですから、書き終えた後に必ず俯瞰する時間を取っています。


まずは気になったことを全て書き出して、一度ふるいにかける。その上で俯瞰しながら、今の自分にとって特に大事と感じた部分だけ、決まった色でマークします。そうすると、未来の自分が読み返したときに、まずここを見ればいいという目印にもなるんですよね。



道具選びのポイントは、「続けたくなるかどうか」



――フォーマットだけでなく、手帳やノートの選び方にもこだわりがあると伺いました。


読書ログに関して言うと、ノートのサイズはA5が多いですね。マインドマップを書くときは広く見開きで使いたいので、そのくらいのサイズ感がちょうどいいです。


罫線は、方眼かドット方眼を好んで使います。また、背景の罫線の色が濃すぎるのも、それに気を取られて、気が散るんですよね。主役はあくまで自分の文字なので、罫線やドットはうっすら見える程度の色がいいなと思っています。


――ペンやマーカーについて、こだわりはありますか?


基本は0.38mmの黒インクのボールペンを1本決めて、それで全て書いています。昔は枝ごとにペンの色を変えていたのですが、色ペンを何本も持ち歩くのが大変で。


今は「とりあえず全て黒で書く→あとからマーカーで色を乗せる」方式に落ち着きました。


▲最後の俯瞰用にマークした部分が際立つよう、各枝の着色用マーカーは淡い色を使うことが多いという


俯瞰用の色のほかに、枝ごとに淡い色で塗り分けたり、吹き出しの枠を色分けしたりもします。自分の気づきやコメントを追記したいときは、同じシリーズの青のボールペンで書き込むなど、本の情報と自分なりの書き込みが見分けやすいようにしています。


――ノートを拝見していて印象的だったのが、本の表紙が小さなシールになって貼られているところでした。あれはどうやっているのでしょうか?


サーマル方式の小さなモバイルプリンターを使っています。私は書影の写真をスマホで撮り、アプリでモノクロで印刷して、ノートにシールとして貼っています。

 

▲スマホとBluetoothで接続し、アプリからそのまま印刷できるサーマルプリンター


本の世界観をノートの上にも少し持ち込めるので、テンションが上がるんです。ただの自己満足と言えばそれまでですが、自分が見返したくなるノートにしておくことが、続けるうえでは大事だと思っています。



読書ログは「本だけ」のものじゃなくていい


――ノートの中には、本以外のログもたくさんありましたね。


ログにすることは「読書に限らなくていい」と思います。例えば、美術展に行く前に、その画家について解説されたラジオ番組を聴いてメモしておく。美術館の楽しみ方の本も読んでおく。それらを読書ログとしてまとめたうえで展覧会に行き、帰ってきたら体験したことをまた書き足したりもしています。

 

▲予習と体験を異なる手帳にまとめている。予習の手帳は持ち歩けるように小さいサイズのものを選んでいるそう


――本を起点に、現実の体験が広がっていくイメージでしょうか。


そうですね。読書ログは、本と現実の時間とをつなぐハブになっている感じがします。ですから、読書ログは「読んだ本をもれなく記録するためのもの」ではなくて、「自分の生活の中で、もう一度味わいたい読書や体験をコレクションするためのもの」という表現が近いかもしれません。


最近は読書が、タイパやコスパといった言葉とセットで語られがちですが、私にとっては、読書ログは「生きた証」の一つなんだと思います。「この本を、こんなふうに楽しく読んだ」「こういうところに心を動かされた」それらをコレクションしておきたいから、ログを書いているのかもしれません。



全て真似しなくていい。余白の1ページから始める、ちいさな読書ログ


――最後に、時間〈とき〉ラボの読者の方にメッセージをお願いします。

 

▲まずはスモールステップから始めることが大切だという矢島さん


読書ログの書き方を、そのまま全て真似しようとすると、最初はハードルが高いかもしれません。本来、読書や手帳は「楽しいもの」のはず。だから、自分がやってみたいと思ったところを、ちょっとだけ試すといった感覚で始めてもらえたらうれしいです。


まずは、手帳の余白ページを1枚開いてみる。そこに、最近読んだ本や雑誌の記事、エッセイから「印象に残った一言」を1〜3個だけ書いてみる。その周りに、「なぜ気になったのか」「どんなときに使えそうか」を、矢印や小さな吹き出しで書き足してみる。それだけでも立派な読書ログです。



――それなら今日からでもできそうですね。


もしそれが少しでも楽しいと感じたら、ページのデザインをちょっと変えてみたり、マーカーで色を足してみたり。


そうやって、小さな成功体験を積みながら、自分だけのスタイルに育てていってもらえたらいいなと思います。時間〈とき〉ラボの読者の方は、すでに手帳とは仲良しな方が多いと思うので、いつもの手帳に少しずつ読書ログの要素を混ぜてみるだけでも、ぐっと世界が変わると思います。


読書ログと手帳は、本当に相性が良いんです。本の学びを手帳に落とし込んでいくと、少しずつ行動が変わっていって、その軌跡がまた手帳に残っていく。その繰り返しの中で、いつの間にか少し違う自分になれているかもしれません。



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読書も、そして日々の小さなチャレンジも。全てを「経験のコレクション」として残していく読書ログは、手帳を使ったとても素敵な記録でした。印象に残った一言と、小さな吹き出しを手帳に添えるだけでも、立派な一歩になります。


全てを真似しなくて大丈夫。

みなさんも、本と手帳を使って経験のコレクションを残してみませんか。


取材・執筆/柳川愛理

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