【本屋大賞実行委員 高頭佐和子さん】本を読む時間〈とき〉は「本と私の世界」

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「わたしの時間〈とき〉デザイン」では、時間〈とき〉をデザインしている方の取り組みや考え方、ライフスタイルのMyルールなどをご紹介していきます。


今回は、本屋大賞実行委員を務められている、高頭佐和子さんのインタビューをお届けします。本屋大賞とは、全国の書店員さんたちの投票によって決定する本のイベントです。2003年に第1回が始まり、2023年で記念すべき第20回目を迎えました。


▲第20回本屋大賞受賞作家・凪良ゆうさんの授賞式の様子


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NOLTYでは本屋大賞の設立趣旨に賛同して2017年から協賛しており、高頭さんは先日行われた第20回本屋大賞の授賞式で、本屋大賞実行委員会の代表としてスピーチをされていました。その際、能率手帳を長年ご愛用いただいていることがわかりました。


高頭さんは、本屋大賞の立ち上げから関わられている方で、当時から本屋大賞実行委員を務められています。子供の頃から本が好きと語る高頭さんの、本屋大賞への想いや本との時間、手帳を使った時間との向き合い方について、みなさんにお届けしたいと思います。



本屋大賞設立のきっかけは書店員の想いから


私が書店員になったのは1996年が最初で、今年で28年目です。最初は、東京の表参道に本店がある青山ブックセンターに就職し、千葉に本社を置くときわ書房を経て、現在は丸善丸の内本店で文芸書を担当しています。


 


本屋大賞を始めたのは、青山ブックセンターに勤めていた時の最後の年です。私が入社した頃から、書店業界は斜陽と言われていました。先行きの不安もあり、自分たちでなにかできることはないのかとずっと考えていたんです。


 


お客様からは、何を読んだらいいかわからないという言葉もよくいただきましたし、面白いと思った本があったら、たくさんの人に知ってもらいたいなとも思っていました。当時よく行われていた、書店員や出版社の人が垣根なく集まって情報交換を行う飲み会で話してみると、他にも同じ気持ちを持っている人がたくさんいたんです。


そんな想いをきっかけに、たくさんの人にご協力をいただきながら、本屋大賞は2003年に第一回がスタートしました。



本屋大賞はたくさんの人に本屋に来てもらうためのお祭り


文学賞では、直木賞が最も影響力のある賞でした。書店としても、直木賞には大きな期待があり、「該当作なし」だったりすると、心底がっかりします。ですが、選考委員の皆様は、文学の発展という視点で選考をされているのだと思います。本屋のために選考をされているわけではないですよね。そこで“書店員”目線で「面白い!」「みんなにも読んで欲しい」と思ったものに投票を行う賞があってもいいのではないかと思ったんです。


書店員は、ユーザーの目線に一番近いですし、売り場にいればたくさんの本を知りますし、面白い本をたくさん知っていると思います。そういった考えが中心にあるので、本屋大賞は本を売るために行っているわけではなく、本屋に足を運んでもらうためのお祭りだと思っています。本屋大賞というお祭りの御神輿に乗っていただくのが受賞作品といったイメージです。たくさんの人に、こんな面白い本があるよと知っていただきたいんです。



毎年、本は何作品も新作が発売され、何人も新人作家さんが登場しています。そのなかで大賞に選ばれたからといって、それが誰にとっても1位の作品であるとは限りません。どんな作品を面白いと思うかは、人それぞれ違っていいのではないでしょうか。


本の雑誌社から販売されているムック本『本屋大賞2023』はご存じでしょうか?この本には、その年の本屋大賞の一次投票から二次投票・発掘本・翻訳小説部門まで、すべての投票が載っています。すごくたくさんの作品が載っていて、こんなにも人それぞれ違った1位があるんだなといつも感じます。



たくさんある作品の中から気になる1冊を見つけてみて、その作品を探しにお店に足を運んでみてください。気になった本の近くに、新たな出会いがあるかもしれません。いつもと違った表紙に惹かれたり、こんな趣味があったんだと気づいたり、今までとは違った自分との出会いや発見ができるのが本屋だと思っています。


私自身、現在は文芸書を担当していますが、たまに違う売り場を歩いてみると、自分の知らない世界がたくさんあることにワクワクしてしまいます。



本を読む時間〈とき〉


私は子どもの頃から本が大好きで、初めて自分で読んだ本は幼稚園のときに読んだ『若草物語』の子供向けダイジェスト版でした。表紙を開き、ページをめくるたびに、マーチ家の姉妹のひとりになったような気分になり、気づけば、『若草物語』の世界に夢中でした。普段生活している現実とは違う世界に私はいつでも行けるという感覚を、その頃から持っていたと思います。



本の続きが気になるとついつい読み進めてしまって、ハッとすると時間がすごく経ってしまっていることも良くあります。移動中の電車なんかはもちろん、自宅では服を着替えながらだったり、お風呂に入りながら読んだりしているときもあります。それくらい本が大好きなので、自分が本屋さんに就職したのは自然な流れだったと思います。



時間〈とき〉をデザインするという考え


本を読むのは楽しいのですが、仕事として読まなければいけないという場合もあるんです。いつまでに読まなければいけないという期限もあったりして、本当に読みたいものは何だっけ?っとなってしまうことがあります。そんなときは、来月はその読みたいものを中心にして時間を使ってみようと、考えを切り替えます。


 


プライベートの予定も実現しつつ、仕事で誰にも迷惑を掛けないようにするにはどうしたらいいのか。どういう風に予定を組み立てればいいのか。前もってできることは何か

を考えて行動することにより、やりたいこともちゃんとできるようにしたいと思っています。


もちろん、予定通りにいかないこともありますし、諦めることもありますが、あらかじめ手帳に、ここでやると書いてしまえば、その日にやるぞ!という気持ちになります。そのようにして、逆算して予定を立てることも多いです。


 


「やりたいこと」と「やるべきこと」とありますが、仕事も遊びも、私にとってはすべて「やるべきこと」だと思っています。時間をどう使うか決めるのは自分の考え次第なんだと思います。


“本を読む”みたいな「やりたいこと」は、人との約束と違って時間が決まっていないので後回しになってしまいがちです。手帳を使って、前もって「やりたいこと」をいつやるか予約することが大切だと感じています。自分と約束をするイメージで、「やりたいこと」も「やるべきこと」のように書きこんであると、その日その時間にやるぞ!という気持ちが湧いてきて、叶えやすい・実現しやすい気がしています。



ミヒャエル・エンデ氏の『モモ / 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語」(岩波書店)という本には、人間の時間を盗む時間泥棒というものが出てきます。「時間とは?」「本当に大切なものは?」と考えさせられるお話なのですが、“時間〈とき〉デザイン”という言葉の時間に対する考え方は、このお話に近いかもしれません。


誰しも、家族のためであったりとか、自分の生活のためであったりと、みなさんそれぞれ必死に働いていると思いますが、時間に追われるのではなく、時間をデザインするという考えを持っていれば、時間とうまく付き合っていくことができるのではないかなと思いました。



これからの本屋大賞について


インターネットやスマートフォンがここまで普及する前は、友人や恋人など、人との待ち合わせに本屋がよく使われていたなと思っています。私自身、「〇〇書店の〇〇コーナーにいるね」と約束をして、その付近をブラブラしながら合流して、ついつい一冊買ってしまっていました。本屋をそんな風に使ってくれる方を見かけると嬉しい気持ちになります。

店内をブラブラするだけならお金もかかりません。約28年のあいだ書店員を続けていて、色々なことがありましたが、本屋に飽きたことはありません。本が好きという方なら共感していただけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。


 


日頃、あまり書店にいらっしゃらない方にも、本屋って楽しいところなんだと思って、気軽に立ち寄っていただき、色々な本を手にとっていただけたらと思っています。


本屋大賞は今年で20回目を迎えました。ここまで続いたことに本当に驚いています。多くの人に愛情を持っていただき、楽しみにしてくださっているお客様や、温かい気持ちでご支援をしてくださる方々がいて続けてこられたと思っております。たくさんの人に「色々な本を読んでみよう」「本屋っていいな」と思っていただくきっかけに、本屋大賞がなれたらうれしいです。


\ コチラもCheck!本屋大賞実行委員会 × ときラボ コラボ企画 /

本屋大賞実行委員会のスタッフさんが時間〈とき〉をデザインするためのヒントとなる本のご紹介


 高頭さんが働かれている丸善丸の内店本店にぜひ足を運んでみてくださいね!

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丸善丸の内本店

■住所

〒100-8203 東京都千代田区丸の内1-6-4 丸の内オアゾ1階~4階

■電話番号:03-5288-8881

■営業時間:9:00~21:00

■アクセス:

東京駅丸の内北口徒歩1分

地下鉄丸の内線 東京駅 徒歩5分

地下鉄東西線 大手町駅 徒歩5分

地下鉄三田線 大手町駅 徒歩5分

地下鉄千代田線 大手町駅 徒歩7分

■X(旧Twitter):@maruzen_maruhon


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次回は、高頭さんの「わたしと書くこと」についてお伺いします。お楽しみに!



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以前所有していた大量の本を手放した経験から「本は嵩張るもの」という印象を持ち、更に環境の変化で読書時間を他のことに使いたく、あえて本を読まないようにしていた時期があるのですが...。数ヶ月したら本が恋しくなり、書店で気になった1冊を購入してしまいました。今では電子書籍も上手く活用しつつ、だけどやっぱり紙の書籍がいいなと思いながら読書を楽しんでいます。


「読書」というタスクは自分も手帳に書いています。そしてもうひとつ、「本を探す」というタスクも。書店やネットで色々な本を見て回る時間、お気に入りです。

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2023.08.25

konさん、こんにちは。

「本を探す」というタスクも手帳に書かれているそうで、とても素敵な時間ですね!書店さんでも、ネットでも偶然出会う本があったり、この時間を大切にされているのが、コメントから伝わってきました。ときラボでも、書店員さんがいろんな本を紹介してくださっているので、よかったらご参考にされてみてくださいね。

返信する
2023.08.28