時間〈とき〉ラボ運営事務局 さん
1949年、生産現場のコンサルティング活動を行っていた日本能率協会が、「時間もまた資源である」という考えのもと、戦後まもない日本で、初めて“時間目盛り”を採用した手帳として「能率手帳」を発行しました。その後、人材育成支援事業、手帳事業、出版事業等の事業部門を集約し、1991年に日本能率協会から分離独立する形で㈱日本能率協会マネジメントセンター(略称:JMAM)が設立されました。
「#JMAM手帳を知る」では、手帳づくりの舞台裏を垣間見たり、歴史を振り返ったり……。社員すら知らない!?情報も盛り込みながらJMAMが手がけてきた手帳のあれこれを毎回いろんな角度からお伝えしていきます。
今回は、NOLTYのもうひとつの定番商品であるNOLTYカレンダーが、どのようにつくられているのかお届けします。NOLTYカレンダーは、手帳づくりのノウハウを活かした罫線の細さや印刷色が特徴で、オリジナルのカレンダー用紙を採用するなどカレンダーならではの使い方に寄り添って作られています。
壁掛けタイプと卓上タイプをあわせて年間60種類以上のラインナップがあり、用途に合わせて選びやすいのも魅力のひとつです。手帳とともに愛用者の多いNOLTYカレンダーの製造過程に迫るべく、NOLTY品質を守りながら、一緒にカレンダーづくりをしている提携先の協力工場を取材してきました!
想像を超える熟練技術とこだわりによって生み出される、NOLTYカレンダーの製造過程をぜひご覧ください!
工場見学に入る前に、まずはNOLTYカレンダーの製造工程を紹介いただき、全体の流れを把握します。工場長の上野さんにご案内をいただきました!
工程は、大きく分けて、刷版・印刷・製本の3工程に分かれており、出荷できる状態まで、一貫してこちらの工場内で行っています。
各工程の説明を伺う中で、一番驚いたことは検査項目の多さです。なんと、全体を通して26ものチェックがあり、機械だけでなく“人の目”でミスがないか入念に確認しているそうです。
▲刷版工程で3つ、印刷工程では5つ、製本工程ではなんと18つもチェックポイントが!
また、NOLTYカレンダーは紙質や視認性にこだわっているため、保管方法や工場内の明かりにもひと工夫あるとか…。注目ポイントを教えていただき、工場見学前からモチベーションは最高潮です!
会議室で全体工程を学んだら、いよいよ工場見学へ。最初は印刷の準備工程にあたる「刷版」をチェックしました。
刷版とは印刷用に使われる“版”のことで、印刷したい画像データを刷版に転写し、インクを載せて用紙に印刷を行っていきます。つまり、「専用印刷機にセットする大きいハンコ」。
印刷は、シアン(青)・マゼンタ(ピンク)・イエロー(黄)・ブラック(黒)の4色の組み合わせで様々な色を表現します。そのため、フルカラー印刷を行うときは各色1枚ずつ計4枚の版の作成が必要です。
刷版を使用して大量に印刷をするため、安定した印刷品質に欠かせない重要な準備工程です。
▲刷版の見本。刷版は網点(あみてん)と呼ばれる極小点で形成されており、網点が大きければ色は濃くなり、小さければ淡くなるといったように、網点の大小で色の濃淡を表現するそう。
▲網点を使った印刷のイメージ。左側のほうは網点が小さく淡いカラーの印刷ができます。反対に、右側に行くにつれ網点が大きくなり、濃いカラーの表現ができるようになります。
▲見本をルーペで拡大して見ると…大量の網点が!網点は小さいもので0.1m、大きくても0.2m以下。写真でお届けするのが難しいレベルの細かさに驚きました。肉眼でもなんとか見えるほどです。
▲「極小の点もにじまないように印刷するのが、印刷品質を一定に保つために欠かせない技術」と語る上野さん。
実は、NOLTYカレンダーも細かな点の集まりで色を表現している部分があります。罫線や背景色はボールペンなどで書き込んだ際のインクのりが悪くならないように、網点で色を表現しているそうです。
▲ 月ごと違ったカラーで印刷されているシリーズのひとつ「NOLTYカレンダー C113」。土曜日のグレーや休日のオレンジなどは細かな点の集まりで印刷されています。
▲NOLTYの壁掛けカレンダーの中で人気の高い「NOLTYカレンダー U115」。書き込みやすいように罫線は細かな点の集まりで印刷されています。日付を確認するだけでなく、書き込むことを前提に考えたNOLTYカレンダーならではのこだわりのひとつです。また、土曜の緑や日曜祝日の赤など、4色の組み合わせではなく特別に調合された特色インクを採用しています。
続いては印刷工程へ。ここでは、先ほどご紹介した刷版を使って用紙にインクを重ねていきます。機械上部のタンクにインクが搭載されており、インク1㎏で約5,000枚もの印刷ができるそうです。
印刷中は汚れやミスプリントがないか、専用のカメラを使って確認。加えて、印刷物は500枚に1枚を保管しておき、もしも印刷ミスがあったときに後から規模の把握や原因調査ができる仕組みにしているそうです。カレンダーは他の印刷物と比べて余白が多い分、ちょっとした汚れも目立ちやすいため、基準値を高く設けて厳しくチェックされていました。
色の管理も徹底されていました。濃度計を使用し、設定した色で印刷できているかを細かくチェックしています。工場内の明かりにもこだわりがあり、自然光に近いLEDライトを使用して、どの位置や角度から見ても色のブレがないように管理をしているそうです。
▲自然光に近いLEDライトの下で、印刷結果を入念にチェックしている。照度を全て統一していることが安定した品質管理に繋がっているそう。
さらに工場の奥へと進むと巨大な印刷機が!こちらは、日本に数台しかないといわれている菊全判10色両面機で、全長は15mほどありカメラの画角に収まりきらないほど大きいです。
▲菊全判10色両面機。途中にいるオペレーターさんと比較してサイズ感が伝わるでしょうか…。
こちらの機械は、名前の通り10色のインクを同時にセットして印刷できるのが特徴のひとつですが、なによりすごいのは、1ラインで両面印刷ができる点です。
一般的な印刷機は、表面を印刷し用紙を裏返し、もう一度セットして裏面を印刷する2ライン工程。1ラインで両面印刷ができると、裏返す工程がなくなるため、印刷ミスや印刷ズレの心配が減らせるそうです。
「この機械はNOLTYカレンダー専用にしちゃおうかなぁなんて考えることもあります」と上野さんからうれしいお言葉も。
協力工場さんのNOLTYカレンダーに対する品質へのこだわりが、NOLTYカレンダーの魅力につながっているなと思いました!
・・・今回はここまで。次回は、印刷された用紙を製本していく工程をお届けします。
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後編記事
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