時間〈とき〉ラボ運営事務局 さん

みなさんこんにちは、時間〈とき〉ラボ運営事務局です。
4月9日(木)、「2026年本屋大賞」が発表され、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』(日経BP 日本経済新聞出版)が大賞に選ばれましたね。
みなさんは、時間〈とき〉ラボを運営する㈱日本能率協会マネジメントセンター(通称:JMAM〔ジェイマム〕)が本屋大賞のオフィシャルスポンサーであること、ご存知でしたか?
この協賛活動が節目である10年目になることから、より本屋大賞を盛り上げる活動ができないかと社内でファンブックの企画が立ち上がり、この度JMAMから『本屋大賞 公式ファンブック』が刊行されました!
ファンブックの刊行記念と、大賞発表に先立ち、4月1日(火)には大阪でトークイベントも開催。今回はそのイベントの様子をご紹介したいと思います。
JMAMは「本屋大賞」の設立趣旨に賛同し、2017年から協賛しています。手帳や書籍の販売においては書店や書店員の皆さまに多大なご協力をいただいており、同時にJMAM自体が出版業界に携わる一員として、本屋大賞への協賛を通じ、業界の活性化に寄与していきたいという思いから活動を続けています。
4月1日(水)に開催された『本屋大賞 公式ファンブック』刊行記念イベントは、「今年の受賞作はどれ? 本屋大賞ノミネート作の解説を聞いて予想してみよう! 〜紀伊國屋書店100周年企画〜」と題し、紀伊國屋書店梅田本店と日本能率協会マネジメントセンターの共催で実施されました。

本屋大賞 公式ファンブック
当日は、NPO法人 本屋大賞実行委員会 理事の内田剛さん、中野雄一さんが登壇。ファンブックをもとに、本屋大賞の成り立ち、選考の裏側がたっぷり語られました。また、司会・進行は紀伊國屋書店梅田本店の名物書店員・百々典孝さんが務め、ノミネート10作の魅力を時間たっぷりに解説!実行委員のお二人からも見どころが語られ、読書意欲をかき立てるトークセッションとなりました。
▲中野雄一さん(合同会社DRUM UP代表)
イベント前半では、本屋大賞がどのように生まれたのかが語られました。
中野さんは、本屋大賞の出発点には、既存の文学賞ではすくいきれない「面白い本」がある、という書店員たちのもどかしさがあったと話します。
▲百々典孝さん(紀伊國屋書店梅田本店)
その背景として挙げられたのが、2003年1月に発表された第128回直木賞です。横山秀夫さんの『半落ち』、石田衣良さんの『骨音』など、そうそうたる作家・作品が候補に並びながら、結果は「該当作なし」でした。
直木賞や芥川賞の発表は、書店にとって売り上げを大きく左右する重要事項です。「該当作なし」となれば、店頭で大きく打ち出せる作品がなくなります。
こうした経験を背景に、文学賞とは別のかたちで書店員が自ら“売りたい本”を前に出していく流れのなかで生まれたのが、本屋大賞でした。
▲内田剛さん(ブックジャーナリスト)
また、イベントでは、本屋大賞が単なる人気投票ではないことも改めて示されました。
本屋大賞では書店員がただ「面白かった」本を選ぶのではなく、「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思える本に票を投じます。そうした売り場感覚が選考に反映されているからこそ、本屋大賞には独自の説得力があります。

2026年本屋大賞の一次投票には、全国490書店、698人の書店員が参加。新刊を扱う書店員であれば、正社員だけでなくアルバイトやパートも参加できる仕組みだそうです。
さらに二次投票では、一次投票に参加した書店員だけが、ノミネート10作をすべて読んだうえで順位をつけ、コメントも添えて投票します。
イベントでは、そのコメントが本当に本を読んだうえで書かれたものかどうかまで、実行委員が確認していることも明かされました。百々さんが「そこ、AIに任せればいいじゃないですか」と笑いを交えて言うと、内田さんは「任せません」ときっぱり。
こうしたやりとりからも、本屋大賞が地道な確認作業に支えられた賞であることがうかがえます。
▲ノミネート10作品。左からあいうえお順に並んでいます。
今年の本屋大賞で最終選考に残った10作の順位は以下の通りです。
1位 『イン・ザ・メガチャーチ』 朝井リョウ(日経BP 日本経済新聞出版)
2位 『熟柿』 佐藤正午(KADOKAWA)
3位 『PRIZE―プライズ―』 村山由佳(文藝春秋)
4位 『エピクロスの処方箋』 夏川草介(水鈴社)
5位 『暁星』 湊かなえ(双葉社)
6位 『殺し屋の営業術』 野宮有(講談社)
7位 『ありか』 瀬尾まいこ(水鈴社)
8位 『探偵小石は恋しない』 森バジル(小学館)
9位 『失われた貌』 櫻田智也(新潮社)
10位 『さよならジャバウォック』 伊坂幸太郎(双葉社)
こうして結果を見てみると、上位には本屋大賞や直木賞などで受賞歴のある作家が多く並んでいます。実行委員のお二方もイベント当日、2026年の本屋大賞について、「どれが受賞してもおかしくない」「本当に予測困難な年だ」と、口をそろえていました。
(C) 湊かなえ/双葉社
イベントではあいうえお順に解説していく流れとなり、最初に解説されたのは湊かなえさんの『暁星』です。同作は事件の犯人による手記と、その事件を作家が小説として描くパートが組み込まれた構成で、「二つの作品が並んでいるような面白さがある」「読み終わった瞬間にもう一度最初から読みたくなる」といった言葉が飛び出しました。


瀬尾まいこ著『ありか』(水鈴社刊)/ 夏川草介著『エピクロスの処方箋』(水鈴社刊)
次に、瀬尾まいこさんの『ありか』の解説に入りましたが、今回の本屋大賞で出版社として注目を集めていたのが水鈴社という話がありました。2020年に設立したばかりの出版社ながら、本屋大賞2026では『ありか』と夏川草介さんの『エピクロスの処方箋』が2作同時にノミネート。小規模だからこその丁寧な本づくりにも、会場の関心が向けられていました。

『イン・ザ・メガチャーチ』 朝井リョウ(日経BP 日本経済新聞出版)
そして本屋大賞を受賞した朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』については、“推し”や共同体の熱狂を、単なる流行ではなく社会現象として描いている点に加え、日本経済新聞出版から刊行された意外性や、主人公3人の視点が切り替わる構成の巧みさなど、その魅力が語られていました。

櫻田智也『失われた貌』(新潮社刊)
今回のイベントで特に印象に残ったのは、候補作があらすじやテーマだけでなく、装丁や編集者、出版社の文脈からも語られていたこと。たとえば櫻田智也さんの『失われた貌』。本作の編集を手がけたのは、新潮社の編集長・新井久幸さんです。編集長は本来、一冊ごとの制作に細かく関わる立場ではありませんが、その新井さんがこの作品に深く関わっている点も含めて、『失われた貌』は“編集者ごと読む一冊”として語られていました。

『殺し屋の営業術』 野宮有(講談社)
野宮有さんの『殺し屋の営業術』は、営業という仕事の本質やノルマの重圧をリアルに描きつつ、ミステリーの仕掛けも効いていることから、「本をあまり読まない人にも薦めやすい一冊」として名前が挙げられていました。イベント会場には営業職の来場者もいて、「営業職の方にはぜひ読んで欲しい!」といった話で盛り上がりました。

(C) 伊坂幸太郎/双葉社
伊坂幸太郎さんの『さよならジャバウォック』は、冒頭からぐっと引き込まれる語り口の強さに加え、ミステリーとも純文学ともカテゴライズできない独特の魅力が語られました。読み終えたあとには、紛れもない“伊坂幸太郎の読後感”が鮮烈に残る一冊です。

『熟柿』 佐藤正午(KADOKAWA)
装丁の話で特に盛り上がったのは、佐藤正午さんの『熟柿』です。熟して落ちた柿の実とタイトル、著者名以外は余白を活かしたデザイン。情報量を極限までそぎ落として作品の世界観を表現した装丁に、会場では「品がある」「センスがいい」といった声が上がりました。

『探偵小石は恋しない』 森バジル(小学館)
森バジルさんの『探偵小石は恋しない』は、タイトルや装丁から受けるライトな印象に反して、読み進めるほどに本格ミステリーの手触りが増していく一冊。読後の「やられた!」という爽快感も含め、心地よくだまされる体験ができる作品として、会場の関心を集めていました。

『PRIZE―プライズ―』 村山由佳(文藝春秋)
そして最後に解説されたのは村山由佳さんの『PRIZE―プライズ―』。直木賞をどうしても獲りたい人気作家を描いた本作を、直木賞を主催する文藝春秋が刊行していることも、出版界の遊び心を感じる点として話題になっていました。

今回のイベントを通して感じたのは、本屋大賞が単に「今年はどの作品が受賞するのか」を楽しむためだけの賞ではないということです。
書店員がなぜその作品を推薦したのか。その背景まで知ることで、本屋大賞はぐっと立体的に見えてきます。作品の内容だけでなく、装丁や編集者、出版社の姿勢まで含めて本を味わう面白さも、このイベントは教えてくれました。
受賞結果が出た今だからこそ、「どの本が選ばれたか」だけでなく、「なぜその本が推されたのか」という視点で本屋大賞を見てみると、読書の楽しみはもう一段深くなりそうです。

全国の書店で発売中!気になった方はぜひ手に取ってみてくださいね。
タイトル:本屋大賞 公式ファンブック
編 集:株式会社日本能率協会マネジメントセンター
全面協力:本屋大賞実行委員会
価 格:1,540円(税込)
出 版 社 :株式会社日本能率協会マネジメントセンター
頁 数:112ページ
判 型:B5
ISBN:9784800594198
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