時間〈とき〉ラボ運営事務局 さん
みなさん、こんにちは。時間〈とき〉ラボ事務局です。
「JMAM手帳を知る」では、手帳づくりの舞台裏を垣間見たり、歴史を振り返ったり…。社員すら知らない!?情報も盛り込みながらJMAM手帳のあれこれを毎回いろんな角度からお伝えしていきます。
今回ご紹介するのは、宮崎県で長く愛されてきた「宮崎県民手帳」。実は2023年版から、NOLTYが制作を担当しているんです。
そのご縁から、「県民手帳って、県庁ではどんな方が、どんな思いで作っているんだろう?」「地域が育んできた手帳文化の裏側を、もっと知りたい!」という思いが生まれ、宮崎県庁で県民手帳の企画・制作を担当している増満さんにお話を伺いました!
― まずは、増満さんが県民手帳の企画・制作に関わるようになった経緯を教えてください。
増満さん:今年の4月に宮崎県庁の統計調査関係の部署に異動になりまして、その担当業務のひとつとして、宮崎県民手帳の企画・制作を引き継ぎました。県民手帳以外には、宮崎県統計グラフコンクールなど、統計に親しんでもらうための普及・啓発の仕事も担当しています。
その前は観光推進課に所属していて、観光地の情報などを扱っていた経験もありました。そのときに蓄えた知識が、今の観光地図の確認や情報更新にも生きていますね。
これまでに培った宮崎の観光知識と、今の統計や行政情報の仕事は、一見別々のようでいて、県民手帳の中ではひとつにつながっている気がします。
― 「宮崎県民手帳」は何年くらい続いている取り組みなのでしょうか?
増満さん:実は、はっきりした“創刊年”は記録が残っていないんです。ただ、過去の新聞記事の中に『昭和39年版の県民手帳を持っている方がいる』という記述がありまして、少なくともその頃にはすでに発行されていたことが分かっています。それより前から続いている可能性もあると思うので、機会があればもう少し調べてみたいなと思っています。
― そもそも「県民手帳」は、どんな目的で作られたものなのでしょうか?
増満さん:元になっているのは、統計調査にご協力いただく調査員さんに配布していた手帳と言われています。
調査員さんが各家庭を回るときに、『こういう統計調査を行います』という説明をしたり、県の概要を伝えたりするための情報が載っている手帳を持ち歩いていたそうで、その手帳や情報が少しずつ整理されて、県民向けに提供する今の『県民手帳』につながっていった、と聞いています。
― スマホもインターネットもない時代ですので、「県が責任を持ってまとめた情報が、ポケットに入っている」そんな安心感から、今の形が育ってきたことが伝わってきます。
― 宮崎県民手帳には、どんな特徴やこだわりがありますか?
増満さん:大きくいうと、『宮崎で暮らすために役立つ情報』が一冊にまとまっているところです。
例えば、
・宮崎県の主要な統計データ
・県内の行政機関・相談窓口の一覧
・暮らしに関する各種連絡先
・1年間の県内イベントカレンダー
・観光地図や物産・観光の情報
などですね。
特にイベントカレンダーは、毎年すべての市町村に問い合わせて、できるだけ漏れのないように掲載しています。他のサイトや本で、ここまで一覧できるものはなかなか無いんじゃないかと思います。
地元の行事でも、意外と知らないかも…と感じるものもあるのではないでしょうか。手帳一冊の中に、地域の情報がぎゅっと詰まっているのが県民手帳の大きな魅力だと思います。
― 表紙やデザインの面での「宮崎らしさ」についても教えてください。
増満さん:ここ数年は、カバーを差し替えられるタイプになっていて、写真やイラストなど、宮崎らしいモチーフを使ったデザインを採用しています。
また、表紙カバーはユーザーさんのお声をいただきやすい部分で、長く使っている方からの声で「本棚に並べたとき背表紙に年号が見えるようにしてほしい」という要望があり、年号の表示位置を変えたりもしました。
今年は宮崎県シンボルキャラクターみやざき犬の「むぅちゃん」を表紙にしたデザインと、シンプルな黒のカバーのリバーシブル仕様になっています。女性職員からは『むぅちゃん可愛い!』という声が多くて、一方で黒いカバーは男性職員に好評でした。毎年、どんな表紙にするかはかなり悩むところですね。
▲上段)県庁で保管されている県民手帳 下段)2026年版宮崎県民手帳
― 企画や制作の中で、大切にしていることや、難しいと感じる点はどこですか?
増満さん:長く続いている手帳なので、『変えない良さ』と『変える必要』のバランスが一番難しいところです。
毎年、行事や施設名、道路の開通状況などは少しずつ変わっていきます。その都度情報を更新しながら、“今の県民の方にとって本当に役立つ内容”に近づけたいと思っています。
一方で、あまりにも大きく変えてしまうと、長年使ってこられた方から『なぜここを変えたの?』という声をいただくこともあります。ページ数や厚さ、価格の制限もあるので、どこを増やして、どこを削るかの判断は、毎年悩みどころですね。
― みなさんも、いつもの手帳でレイアウトやページ構成が変わると、「うれしい変化」と「ちょっと戸惑う変化」の両方を感じることがあるのではないでしょうか。県民手帳も同じように、「続いていくための微調整」を重ねていました!
― 県民の方から印象に残っている声や反響があれば教えてください。
増満さん:毎年、秋口になると『今年の県民手帳はいつから販売ですか?』という問い合わせをいただきます。長く使ってくださっている方が多いんだな、とうれしく感じますね。
個人的な話ですが、今年は発売日に友人から『買ったよ!』とメッセージが届きました。私が県民手帳に関わっていることを知っていて、“応援のつもりで買ったよ”という意味も込めてくれていて、とても励みになりました。
今年の表紙の犬のデザインについても、取扱先の方や職員から『すごく可愛い』という声をたくさんいただいています。
― 大学生のインターンの方とも、一緒に県民手帳のことを考える機会があったそうですね。
増満さん:「夏休みに大学生インターンの方が来てくださって、そのプログラムのひとつとして『県民手帳の販売促進を考える』という課題に取り組んでもらいました。
例えば、宮崎の“神楽”の情報をもっと載せてはどうか、県内各地で行われている神事や伝統行事を、一年を通したイベントとして見せられないか、など「観光ガイド的に使える手帳」といったアイデアも出てきました。
これまで手帳にあまりなじみがなかった若い世代の意見はとても新鮮で、今後、少しずつ内容に反映していけたらと思っています。
― デジタル化が進む中で、紙の県民手帳が果たす役割をどのように感じていますか?
増満さん:今はネットで検索すれば、大抵の情報は出てきますよね。でも、デジタルに慣れていない方にとっては、“ほしい情報にたどり着けない”“それが本当に正しいのか不安”
ということも多いと思います。
その点、県民手帳は『県が出している、信頼できる情報源』として、安心して開いてもらえる一冊になっているのではないかと感じています。必要なときに、すぐにパッと開いて引ける。そんな“手元にある安心感”は、紙の手帳ならではの良さだと思います。
宮崎には、ゆったりとした時間の流れを指す「日向時間(ひゅうがじかん)」という言葉があるそうです。せかせかしない、自然に寄り添うような時間の感覚。取材の中で、増満さんもその豊かさを感じていると話してくれました。
宮崎県民手帳には、行政・生活・気候・行事・観光などなど、地域のさまざまな“時間”がぎゅっと詰まっています。ネットでは探しにくいけれど生活に欠かせない情報、季節ごとの行事や風習、ふと出かけたくなるきっかけ。
そうしたひとつひとつが、手帳という形で手元にあるからこそ、自分の暮らす地域の「時間」を、自然と意識できるのかもしれません。
きっと、ときラボメンバーさんの暮らす土地にも、その地域ならではの“時間の流れ”や“季節の楽しみ方”があるはずです。「うちの県・地域のこんなところが好き!」というエピソードがあれば、ぜひコメントで教えてください。
長脛彦 さん
還暦を超えた県民手帳いいですね。一方では,我が圏もその1例ですが,今年で「県民手帳仕舞い」を宣言するところもあるようです。その県の独自色や伝統の深さというだけでは説明がつかないと思われます。日向時間,出雲時間,ウチナータイムなど,標準的な時間軸とは別の時間の流れがあるところには必要なのでしょうね。