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内田康夫『孤道』

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 これまでの「読書記録」を見返してみると,ほとんどの場合,1人の著者についてその著作を1,2冊しか読んでいないが,例外的に多くの作品を読んでいた作家の1人が,内田康夫(1934-2018)だった。新聞連載中,病を得て中断した『孤道』は未完のまま出版され,「孤道完結プロジェクト」として続編を募集すると,100を超える応募があったという。書き終えられなかったのを含めれば,孤道は数百もの分岐した道を持つだろう。その最優秀作・和久井清水『我れ言挙げす』が『完結編 金色の眠り』として刊行されている。

 そこで,敢えて本編を読まずに,「完結編」を読むことにした。事件の探索行に途中から加わることになるが,同行者の素人探偵浅見光彦とは旧知の仲だし,永遠の33歳の健脚は必ずゴールまで連れて行ってくれる筈だ。まして,伏線回収の下りルートではないか。…と,本編で提示されている筈のストーリーを想像しながら読む…これがなかなか楽しい読書体験で,1日で読み終えた。


 考えてみれば,数十万年の人類史,数十億年の生命史に途中から加わり,ほんの少し同行するのが人生である。それまでの歴史本編については自分で続編を書きながら学んだり想像するしかない。同行者と手を携えて,大団円のゴールを信じながら…。

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