時間〈とき〉ラボ運営事務局 さん
1949年、生産現場のコンサルティング活動を行っていた日本能率協会が、「時間もまた資源である」という考えのもと、戦後まもない日本で初めて“時間目盛り”を採用した手帳として「能率手帳」を発行しました。その後、人材育成支援事業・手帳事業・出版事業と共に独立し、現在の(株)日本能率協会マネジメントセンター(略称:JMAM)が設立されました。
「#JMAM手帳を知る」では、手帳づくりの舞台裏を垣間見たり、歴史を振り返ったり……。
社員すら知らない!?情報も盛り込みながらJMAMが手がけてきた手帳のあれこれを毎回いろんな角度からお伝えしていきます。
第1回は「ブランドの誕生秘話とこれから」について。「NOLTY(ノルティ)」や「PAGEM(ペイジェム)」が誕生したマル秘エピソードなどを、現JMAMの取締役である髙梨に話を聞きました。
▲商品開発を長年担当していた高梨。
もともと私たちJMAMは、「経営革新の推進機関」として1942年に設立された社団法人日本能率協会という組織から独立・分社化してできた会社です。日本能率協会は、日本の有名企業が会員の組織でした。
当時、能率協会の理事の一人に、大野巌さんという方がいました。大野さんは大野化学工業という会社の社長でもあり、生産性向上のために時間の使い方が重要だということを深く認識されていたそうです。
▲人物写真は能率手帳の生みの親の大野さん。
▲大野さんが実際に使われていた“時間目盛り”入りの手帳。このアイデアが後の能率手帳誕生に繋がります。
1949年、日本が戦後復興に向けて歩み始めるなか「時間もまた資源である」という考えのもとに日本能率協会は「能率手帳」をつくり、会員に配り始めました。
すると、会員だった企業の管理職の方々から「非常に使いやすい」というお言葉をいただき、その後多くの要望を受け、1951年に法人に向けて販売を開始。そのような背景もあり、当時の能率手帳は、管理職向けの高級感ある、ちょっとステータスのあるツールだったと聞いています。今ではJMAMのグループ会社も含め、市販と法人合わせて年間1,000万冊以上の手帳を発行しています。
▲初めて市販された能率手帳の1959年版。
1989年は、日本社会の時間の使い方が大きく変わっていた時期でした。日本はバブル絶頂期で忙しさ感が増してきました。そこで手帳の時間目盛りを1時間から30分刻みに変更しています。これも当時のアンケート調査の結果による、時間に対する感覚の変化を反映してのことです。
もちろん、時代の変化のなかで変えていないものもあります。例えば、手帳の紙です。1959年からは手帳専用用紙をオリジナルで開発し、人の目に優しい黄色味がかった紙を使っています。その後、この手帳専用用紙をベースに開発は続き、今では手帳のサイズなどに合わせて数種類の手帳専用用紙を使い分けています。
私が新入社員の頃、手帳の用紙をつくっていた工場に見学にいったところ、「能率手帳は2番目に非常に気を遣う紙だ」と言われ、驚きました。手帳は記入するものなので、表裏差があってはいけないとか、重くならないように薄い紙でなくてはならない。しかし万年筆や様々なペンで書いても裏写りがしないようにとか……。紙をつくるのって本当に技術が必要なのです。
ちなみに一番気を遣う紙は世界的メーカーのコピー用紙でした。コピー用紙はかなり紙に熱がかかるため、曲がらないようにするなど、かなり気を遣うそうです。
▲能率手帳は万年筆で書くと書き心地のよさがとてもよくわかるそう。
また同時に、企業が週休2日制導入を進めていくなか、能率手帳は1990年版に日曜始まりから月曜始まりに手帳のデザインを一新しました。1970年代くらいまで土曜日は「半ドン」といって半日出るのが当たり前というような時代でした。そして80年代後半に週休2日制が浸透しはじめると、土日を連続して予定を組む方が増えました。土日を一緒にしたほうが手帳としては使いやすいだろうという議論があり、能率手帳は月曜始まりになりました。それ以降日本のビジネス手帳は月曜始まりの手帳が増えてきたのです。
▲改定前と改定後。時代の流れを受けて時間目盛りを1時間から30分刻みに。
70年以上経つ歴史のなかには失敗もあります。1991年に、能率手帳の機能や仕様を詰め込んだ女性向け手帳ブランド「PAGEM」をつくりました。今では多くの方に使っていただくブランドになりましたが、このときはほとんど売れませんでした。
▲デザインは異なりますが、能率手帳の要素をPAGEM(左)にもギュッと詰め込んでいます。NOLTY(右)。
実際に女性向け手帳の市場が動き出したのは、それから約8年後、1999年につくった能率手帳の働く女性向けのシリーズ「キャレル」です。当時のPAGEMが支持されなかった理由は働く女性に寄り添った内容ではなかったこと。この反省を活かし、「キャレル」は働く女性たちからの支持を集めていた雑誌「日経ウーマン」と組んでつくりました。働く女性がどんな手帳を欲しいのか、細かく調査を行い、ビジネスで使いやすいだけでなく、豊富なカラーバリエーション、A6やB6などバッグに入れられる携帯性に加え、書きこむスペースが多いサイズをつくったり、女性に役立つ資料ページの充実など、創意ある工夫を入れ込みました。
その後、PAGEMではリバティやローラ・アシュレイといったライセンス商品の展開、TBS「王様のブランチ」とコラボしたシリーズを発売したり、家族の予定を分けて書くのに便利なファミリーマンスリー手帳を発売するなど、様々な商品を多くの方にお使いいただき、おかげさまで今年30周年を迎えることが出来ました。
▲“働く女性「career」にエール(yell)を”をコンセプトに作られた「NOLTY キャレル」シリーズ。当時、ビジネス重視の女性向けの手帳を置く店舗が少なかったが、日経ウーマンと企画したことで注目され、店頭に置く店舗が増えました。
▲家族みんなの予定を大切にしたいママに向けて、家族の予定を書くのに便利な手帳として2011年に誕生した「PAGEM ファミリーマンスリー」シリーズ。
2013年には、長い歴史を歩んできた「能率手帳」のブランドを「NOLTY」に刷新することを発表。ビジネスに限らない手帳の用途の変化などを背景に、「書く」ことの可能性をより広げていくことが理由でした。
伝統は大切にしながらも、今後は「時間〈とき〉デザイン」というコンセプトをベースに手帳の使い方の広がりを考えたいと思っています。
私たちは戦後、より生活を豊かにするために「時間は資源だ」と考え「時間を管理すること」を提案しました。しかし、時代は変わり、物質的には恵まれた社会になりました。
これからは、一人ひとりの心の豊かさを大事にしていく時代。時間を資源として考えて管理することから、未来を自分らしく生きるために時間を人生そのものととらえ、時間〈とき〉をデザインすることを提案したいと思います。
70年以上、みなさんの時間の使い方や価値、質について考えてきた私たちだからこそ、「時間〈とき〉デザイン」という考え方を世の中に広め、世界中の人々が自分らしい人生を歩むことができるよう尽力していきます。
過去を振り返り、経験値を積み重ねた上で自らの未来をデザインしていく。JMAMの手帳は、自分らしい人生を歩む人をひとりでも多く増やすために時間〈とき〉デザインを実現する1つのツールであり続けたいと考えています。
NOLTY 2022年 NEW MESSAGE 「予定は、希望だ。」
ID 2 さん
手帳メーカーさんだと思っていましたが、時間〈とき〉デザインを実現するツールの1つに、手帳があるんですね!貴重なお話ありがとうございます。
ID00 さん
はじめは父が年末に会社から持ち帰ってくる手帳でした。
取引先に頂いたものだろうと思います。
地味な紺色(失礼!)でしたがとても使いやすく、「これだけは貰ってきて!」と
毎年お願いしていました。
結婚して家を出てからほかの手帳の使用もしましたが、やはり能率手帳がいい!
鞄の中で見つけやすい派手なカラーを選んでいます。
子供ができてファミリータイプとなり、その子が社会人となった今年、再びスリムタイプに戻りました。
30年くらい前の、運命の出会いですね。
わたのひととき さん
2022年の手帳はペイジェムにすると決めて商品をみていたら、ノルティのほうでも週間ブロックタイプでしかも手軽な大きさ、価格のものがあり、悩んだのちに今はノルティの商品を使っています。
どちらにも同じ想いが通じてあることになんだか心がポカポカしました☺️